世界最古の健康書、現代中医学の基礎となっている黄帝内経には、冬は“閉蔵”の季節、11月~1月の冬の3ヶ月は、万物の精気が閉じこもる時期と書かれています。厳しい寒さで陽気が抑えられ、陰気が最も盛んになる時、万物が静かに落ち着いている状態です。活発な活動でエネルギーを消耗することは避け、蓄えることを第一にゆっくり過ごす時期ということです。

閉蔵の季節です。

夜は早く寝て、朝はゆっくりと起き、日の出日没に伴って生活するのが、冬のエネルギーに則ることになります。体内にある陽気を漏らさないようにし、寒い刺激を避け、身体を温かく包むことが大事です。

冬の寒さは自然界の邪気:寒邪となって身体に侵入し、さまざまな不調を引き起こす原因になるため注意が必要です。寒邪の侵入によって身体が冷やされると、カゼ、関節の冷えや痛み、四肢の冷えなどの症状が現れます。このような寒邪の侵入による症状を、中医学では“外寒”と言います。

これに対し“内寒”は、寒さによる陽気不足で体内の機能が低下し、身体に不調が現れることです。腹痛や下痢、食欲不振といった胃腸の症状のほか、胸痛、動悸など心の症状、息切れ、咳といった肺の症状など、様々な症状が出てきます。

冬を支配する水の五行は、身体の部位だと腎を司るため、腎を養うことも大切です。腎は生命を維持するエネルギー源:精を蓄えている器官で、人間の生命力そのものを司るところです。腎の働きが活発であれば生命力も強くなり、元気に冬を乗り切れるのです。

ということで、冬の養生は“寒さ”と“腎”に対応すること。中医学では、『養腎防寒』と言います。腎のエネルギーを衰えさせないように注意し、腎臓の活動を旺盛に維持することが、冬の寒さから身を守るための基本です。そして、頭暖・背暖・脚暖の『三暖』を心掛けてください。頭・背中・脚の3ヶ所を温めることで、外邪・内邪の侵入を防ぐ働きが強まります。

寒く乾燥している冬の気候に合わせて、食生活では『保陰潜陽』が基本となります。これは自然界に合わせて、陽気を抑えて陰気を助ける飲食が好ましいということです。冬には保温(暖かい食事により体温を維持しエネルギーを増やす)、防寒(ミネラル補給で寒さへの抵抗力をつける)、防燥(ビタミンB・Cなど飲食による補給で乾燥を防ぐ)、補養(十分な栄養を摂る)、これらを意識して食事を摂るのが良いのです。

冬に必要な養生をしないと、腎の気を痛めることになります。そうすると、春に足が痺れて腰が曲がる病気になると、黄帝内経では述べられています。