12月は子月、冬のど真ん中で非常に強い水の五行が支配する、冬のエネルギーのピークの時期です。
世界最古の医学本・健康本と言われる黄帝大経の“素問・四季調心大論”には、冬の養生についてこう書かれています。
『冬の三月を〝閉蔵″と言う。水は凍り、地は避ける。陽気をかき乱してはならない。早寝遅起き、必ず日が昇るのを待って起きる。志は伏せて、静かにしておく。私意のある如く、すでに得るが如き、寒をさりて温め、皮膚より洩らさず、気を奪われてはならない。これが冬に応じること、養蔵の道である。この気に逆らえば、腎を損ない。春に足がしびれる病となり、生を助ける気が少なくなる。』
冬は早く寝て日が昇ってからゆっくり起きる、気持ちも穏やかに保つ、心身ともにあまり活動的にならず、温かく過ごすことが大事だが、運動などで汗や気を漏らさないようにする、ということになります。
冬の寒い季節こそ、運動をして身体を温める方が良さそうですが、中医学に於いてはそうじゃないんですね。エネルギーを消耗せず温存することが大事、ということですね。動物が冬眠するのも、この理に叶っているんですよ。
中医学には動物性の生薬が十数種類あります。冬の季節に良いとされる、腎を補う効果があるものとして、アワビやナマコ、すっぽんの甲羅、猪の背骨などがあります。香港やシンガポールに住む、中国本土をルーツに持つ友人たちは、それらの食材を漢方薬として摂取するだけでなく、鍋で煮込んでスープにしたり、毎日の食事として自然と取り入れているんですよ。ローカルのスーパーで、普通にそういう食材が売られているんです(中には、〇〇に効くセットという風に、数種類の漢方生薬がパックになったシリーズもあります)。
身体を温める力のある食材としては、羊肉、鹿肉、鶏肉・・・などが筆頭に上がります。フレンチやイタリアンでもこの時期にジビエ(狩猟によって食材として捕獲される野生鳥獣の肉)を食べる習わしがありますが、狩りの季節のピークということだけでなく、身体を温める肉類であるということを自然と知っているからだ、という話を以前、日本に本格的なフランス料理を根付かせたひとりである巨匠:ムッシュ・ダニエル・マルタンから伺ったことがあります。
医食同源というのは、中医学の根源となっているひとつですが、中華料理だけというものではなく、過酷な気候の元で健康を保つように出来上がったインド料理もそうですし、フランス料理やイタリア料理でも、実は根底に根付いている理念なんですよ。