今日は中秋の名月、十五夜です。カレンダー上で“9月15日”に十五夜が当たるのは、実に60年ぶりのこととか。残念ながら東京の天気予報では、今宵はお月様を愛でることは難しい様です。

十五夜の月を鑑賞する慣習は中国に由来しています。中華圏では、『中秋節』と言う名で祝日となっており、盛大にお祝いします。中国文化圏では、どこも欠けていない満月を円満や完璧の象徴と考えることから、1年で最も美しいとされる中秋節の満月(実は、年によっては満月にならない時もあるんですね~)は、特に大切にされるんです。

日本では、十五夜には月見団子というのが定番ですが、中華圏ではこの時に月餅を食べるのが慣習なんですよ。香港やシンガポールなどでは、有名な菓子店や大手ホテルのギフトショップが1ヶ月以上前から、中秋節用の特別な月餅を売り出し始めるのがここ数年で加速してきていますね。

It’s a mooncake day!

月餅の餡にはいろいろな種類のものがありますが、この中秋節に食べる月餅は、中に塩漬けにしたアヒルの卵の黄身が入った白餡のモノがスタンダードの様です。鹹蛋(タンファン)月餅というもので、元々は広東省から広まったスタイルとのこと。私が鹹蛋月餅を知ったのは7~8年前、ちょうど中秋節近くに香港に滞在していた時です。地元香港人の友人からのプレゼントでした。真っ二つに切ると、餡の真ん中にオレンジ色の丸い黄身が現れるようになっており、これが満月のお月様を表しているという訳なんです。甘いモノに目が無い私は、貰った時はとても喜んだのですが、帰国していざ食べてみると、残念ながら塩漬けのアヒルの卵の味と、白餡の味、そして月餅の外皮の香ばしい味、それらがどうしても三位一体に感じられず・・・。個人的には、月餅の餡は甘くて美味しい味に限ると思うんですよね~(最近では日本でも、この卵入り月餅が売られているのを目にする様になってきていますので、ぜひトライしてみてください)。

その後、香港人の友人から味の感想を求められたので、率直に意見を述べたところ、日本の中華街や有名中華店で売られている、クルミや松の実などのナッツ類がぎっしり詰まったものや、ゴマ油の味が香ばしいねっとりとした黒餡など、水分が少なめの固い餡を使うタイプというのは、北京を中心とした中国本土北部から広まったスタイルなんだそうです。香港人の友人曰く、ハスの実餡やナツメ餡など、柔らかめの餡のモノが広東スタイルとのこと。

中華料理というとひとくくりに捉えてしまいますが、実は地域によって特徴が異なるんですよね。山東、上海、広東、四川・・・厳密にはもっと細かい分類があります。各地域で発達した中華料理の特徴というのは、その土地の理に叶ったものなんです。世界最古の医学書・健康書・養生書である黄帝内経には、どういう特徴の土地だからどういう料理が発達したのか、そういうところも事細かに書かれていて、実に面白いんですよ!